2023九大【理系数学】解説・解答・講評
2023九州大学の理系数学の解説・解答・講評をお届けします!
文系数学については↓の記事をご覧くださいm(_ _)m
〔1〕
問題
考え方
(1)は「相反型4次方程式」を解くだけです。解き方についてはこの記事のここをご覧くださいm(_ _)m
(2)は、複素数平面上での原点を頂点に含まない三角形の形状把握です。
原点を頂点に含むタイプは教科書にも載ってるんですけどね。類題が2023同志社大全学部理系数学[Ⅰ](2)でも出題されています。
与式中で登場回数が多い頂点を回転中心とし、
\(\text{(回転後)}-\text{(回転中心)}\:\)\(=\text{(極形式)}×\{\text{(回転前)}-\text{(回転中心)}\}\)
または
\(\displaystyle\frac{\text{(回転後)}-\text{(回転中心)}}{\text{(回転前)}-\text{(回転中心)}}=(極形式)\:\)
を与式から作らないといけません。今回は与式が \(\alpha\:,\:\beta\:,\:\gamma\) の対称式なので、どれを回転中心としても大丈夫です。解答では \(\alpha\) を回転中心としています。また、(1)の誘導を意識し、今回は後者の分数の形を作るのが良いでしょう。
類問の経験がないとキツイ処理です。1996関西大の問題を授業で扱うめぐろ塾↓的中(笑)
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ま~でも、
\(\alpha\:,\:\beta\:,\:\gamma\) の対称式だから正三角形じゃね?
って予測は立ちやすい問題ですし…例えば \(\gamma=0\) としちゃえば、原点を含む三角形の形状把握ってゆー教科書内容に持ち込めるって逃げ道も用意されてる問題なので、類問の経験がなくても完答近くまでいって欲しいところです。
ってか今年のセットはきつすぎるから、計算量も少ないこれを外しちゃうと点数がヤバくなる(笑)
解答
〔2〕
問題
考え方
(1)は実際に \(a_2\:,\:a_3\) を求めてみれば、\(a_2\) 以降が0になることが分かります。帰納法で示して終了。
(2)も同様にすれば、ず~と \(a_{n+1}=2a_n-2\) になりそうってことが分かるので、帰納法で証明→特性方程式タイプの漸化式を解く→極限計算で終了です。
(3)は \(a_2\) を求めてみると \(a_2<1\) になって、後は(1)と同じになるので終了。
と、(3)まではムズくないんですが、(4)はキツイです。
ストーリーとしては、
\[a_{n+1}=\begin{equation}\begin{cases}2a_n-2&(a_n>1)\\0&(a_n≦1)\end{cases} \end{equation}\]
であり、
しばらくは上が使われる
↓
あるタイミングで \(a_n\) が1を下回る
(計算すると \(n\) が \(1-\log_2(2-\alpha)\) を超えたときになります)
↓
結局そのタイミング以降は下を使うことになるので、\(a_n\) は0に収束
ってことは(3)の誘導から把握できるんですが、この論証が非常にしづらい。
上を使っているとき、減少数列であることを断れば、減点はされないとは思うんですが…
結局、論証しづらいときは「背理法」を検討するって基本に立ち返ると、解答のようにできますが、ここまでたどり着くのは難しいでしょう。
そもそも(3)までの段階で帰納法証明を2回も行わないといけないことから、(4)のストーリーを把握できた時点で、1問あたりの制限時間30分近くを使ってしまうんではないでしょうか?
(3)までで及第点、(4)はストーリーが読めたら、論証不備覚悟でそれを書いて部分点を狙うのが現実的です。
解答
〔3〕
問題
考え方
文字多すぎて、解いてる側のメンタル折ってくる問題ですね~(笑)
(1)は、
- 結局「\(\overrightarrow{m}\:,\:\overrightarrow{n}\) が1次独立」である条件の証明であることに気づく
- \(D≠0\) は否定で証明しづらいので、「背理法」
って気づければ、解答のように、
\(D=0\) のとき、\(\overrightarrow{m}/\!/\overrightarrow{n}\)
↓
\(\overrightarrow{m}\:,\:\overrightarrow{n}\) は1次従属で、矛盾
ってできるんですが…ここまで冷静に処理できた人が何人いることやら(笑)
ただ、(2)は連立方程式を解くだけ!
なのでカンタンです、それでも文字が多くて混乱するでしょうが(笑)解答のように、
まず \(\overrightarrow{v}\) だけ求めるために、\(x\) 成分と \(y\) 成分をおく
↓
内積条件2つだけに注目して連立方程式を作成して解く
↓
同様にして \(\overrightarrow{w}\) も求める
というように、最初に4本等式を立式しないことが、混乱を防ぐためには重要です。
因みに(2)は、2014年度以前の数学Cの「行列」の内容で、列ベクトル \(\overrightarrow{m}\:,\:\overrightarrow{n}\) から作られる2次正方行列 \(A\) の逆行列 \(A^{-1}\) を構成する列ベクトル \(\overrightarrow{v}\:,\:\overrightarrow{w}\) を求めていることになります。このとき、\(D\) は \(\textrm{det}A\) と書かれ、「行列式」と呼ばれるものです。
2025以降も「行列」は復活しないんで、覚えておかなくていいですよ(笑)でも、10年前は教えてたんで一応載せときます↓
2次正方行列の逆行列
2次正方行列 \(A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\) について、単位行列 \(E=\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}\) に対し、
\[AB=BA=E\]
を満たす2次正方行列 \(B\) を「\(A\) の逆行列」と呼び、 \(B=A^{-1}\) と表す。これは \(\textrm{det}A=ad-bc≠0\) のときに存在し、
\[A^{-1}=\displaystyle\frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d&-b\\-c&a\end{pmatrix}\]
となる。
懐かしいな~って思いながら解いてました(笑)そして、(3)は行列知ってるオレなら余裕なんじゃね?
って思ってたんですが…(3)はキツすぎます、行列知ってても何の役にも立たなかったです(笑)
(2)の誘導を意識し、\(\overrightarrow{k}\) に \(\overrightarrow{v}\:,\:\overrightarrow{w}\) をかけて、\(r\:,\:s\) を内積で表しておく
↓
すべての \(\overrightarrow{k}\) で整数 \(r\:,\:s\) が存在
↓
「恒等式」における「数値代入法」を意識し、
\(\overrightarrow{k}=(1\:,\:0)\:,\:(0\:,\:1)\) と、最もカンタンにしたときの \(r\:,\:s\) は整数
↓
それらを組み合わせて分子に \(D=ad-bc\) を作ると、 \(\displaystyle\frac{1}{D}\)=整数 が作れる
↓
\(D\) のとりうる値は \(±1\) のみ
↓
必要条件のみを処理したので、十分性の確認を行って終了
クソ頭を悩ませました、これだけで1時間くらい使いましたね(笑)条件の与えられ方が複雑なので。時間内にこの解答書けた受験生いたら…むしろその数学力が怖い…
全体的に言って、(2)だけでも解ければ万々歳でしょう。(2)が解けたら、(3)の最初の \(\overrightarrow{k}\) に \(\overrightarrow{v}\:,\:\overrightarrow{w}\) をかけるとこだけやって、部分点は拾って欲しいところ。
解答
〔4〕
問題
考え方
文章長すぎて、解いてる側のメンタル折ってくる問題ですね~(笑)
(1)は、条件(A)・(B)の式に \(x=0\) を代入して、\(f(0)\) と \(g(0)\) の連立方程式を解くだけ。でも \(g(0)\) で因数分解、\(g(0)=0\) 以外の場合は不適って冷静に論証できなかった人も多いかも。
(2)は、条件(D)と(1)から \(f\:,\:g\) の極限の式を導いておき、「導関数の定義式」から \(f'(x)\) を計算すれば証明できたことになります。因みに極限の式は「微分係数の定義式」から導きます。違いが分かっていない人は↓の記事を読んでくださいm(_ _)m
(3)は、左辺を展開、実部・虚部を比較した等式の証明に変換。微分条件が与えられていることから、立式した等式の左辺を微分して0になることを確認。その両辺を不定積分し、\(x=0\) を代入して積分定数を求めます。
この(3)までできれば充分だと思います。正直僕は、「\(f(x)=\cos x\:,\:g(x)=\sin x\) であることが示される」以降はしっかりとは理解できませんでした(笑)問題文も \(p(x)\:,\:q(x)\) で使われている \(f(x)\:,\:g(x)\) が条件(A)~(D)を満たす関数であることを保証してくれてないし…
でもこれらの記事↓
でも言ってる通り。こーゆー共通テストよろしくな誘導系長文問題は、しっかりと理解できなくても解けるんですよね。
(B)と(D)の証明しか問われていないから、全体の理解は諦めて良し
↓
一段落目の(B)を使って、(B)を証明
↓
(D)は極限計算の問題じゃん?って考えて、再び「導関数の定義式」から計算
ここで、積の微分法の証明にあたる計算を実行しないといけないので、「導関数の定義式」を作れるように0となる部分を作る、という積の微分法の証明の経験を要求してくる作問は個人的に好印象でしたが…
ここまでたどり着いた人が何人いるものやら(笑)
でも、最後の空欄「ア・イ」はサービス問題です!一段落目の最後の文章と、空欄直前の「\(p(x)\:,\:q(x)\) がまず求まり、」から、ノリで \(p(x)=\cos x\:,\:q(x)=\sin x\) としてれば当たります。(4)で(B)の証明とここをとれた人はかなり点数かせげたはず。
解答
〔5〕
問題
考え方
久々に「まともな問題」(笑)
それでも一般的には難易度高めな内容、計算量も多いですが。
(1)は、「接線が \(y\) 軸に平行」=「接線の傾き \(\displaystyle\frac{dy}{dx}\) が存在しない」なので、その分母にあたる \(\displaystyle\frac{dx}{dt}=0\) を解くだけですが…論証的に分母=0でやるのは汚いので、解答ではベクトルで論証し、その \(y\) 成分≠0まで断りましたが…
答あたってりゃオッケー、今年のセットは時間足りなすぎるから、細かいとこにこだわっちゃダメ!
(2)は、「媒介変数表示で表される曲線の求積」ってゆー、上位校での典型内容です。注意点としては、
- \(y≦x\) を満たす \(t\) の範囲を計算しておき、\(C\) の作図範囲を減らすこと
- その \(t\) の範囲の端が \(y=x\) との共有点
- \(C\) の \(x\) 座標が単調でなく、\(y\) 座標は単調増加なので \(y\) 軸方向に積分すること
です。\(y\) 軸方向にさえ積分しておけば、解答のように「台形の面積を引く」とまで考えなくても記述・計算量はおさえられます。
最後の計算は多少面倒なので、外しちゃったらしょうがないです。僕も1回目は外しちゃって、2回目であてました(笑)積分変数を \(t\) に変換するところ、そしてその後の積分計算の手法(半角公式の利用や部分積分の利用)を明確に記述し、減点をおさえましょう。
解答
講評
2022も難しかったんですけどね…さらにそれより…
解答方式 | 試験時間 | 大問数 | 難易度 |
---|---|---|---|
記述式 | 150分 | 5問 | 難化 |
過去最高レベルの難易度だったんじゃないでしょうか?(笑)
例年よりも、問題を解く順番を正しくセレクトできたかが重要だったと思います。
既視感を覚える〔1〕・〔2〕(1)~(3)・〔5〕で8割方の点数を獲得
↓
〔4〕→〔3〕の順で部分点を獲得
が一般的にはベストな戦略でしょう。
- 〔2〕(4)や〔3〕(1)で、気づきにくく「背理法」を要求してくる
- 〔3〕を、受験生が経験ないであろう「行列」の問題にしてくる
- 〔4〕を、共通テストのような長文問題にしてきた、さらに計算量も多い
といったことから、満点は望むべくもないテストです。2024受験の皆さんと同じく、来年はこれよりは易化することを祈っております(笑)
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